術前化学放射線療法−治療中の生活と治療の効果
このブログを始めたのは術後化学治療中だったので、
それ以前の記録を少しずつまとめるつもりが
順不同で投稿してわかりにくくなってしまっていますが
放射線治療中のことについてまだ書いていないことに気づきました。
現在治療をされている方、これから治療をされる方が
経験者の一個人の意見として参考にしていただけたら幸いです。
私の治療は
直腸がん:ステージ3b(中分化腺がん、リンパ節3)
治療プラン:術前化学放射線療法(5週間)→手術(放射線治療の8週間後)ストーマ造設→術後化学療法(FOLFOX 8回/4ヶ月)→ストーマ閉鎖
でした。
術前化学放射線療法(Neoadjuvant Therapy)の目的は、
肛門を温存するために手術の前に腫瘍をできるだけ小さくすることです。
放射線腫瘍科の先生からはこの治療をすると
と説明を受けました。
この治療について日本大腸肛門病学会のページでは
このような記載がありました。
おそらく最新のものではないと思いますが、
再発率が減少すると言っています。
直腸癌の治療法として, 日本では手術治療が中心ですが, 欧米および日本以外のアジアの先進諸国では放射線療法あるいは放射線と抗癌剤を一緒に用いる化学放射線療法を手術前に行ってから手術を行う”集学的”治療が標準的な治療法として確立しています. 一般的に, 直腸癌を手術だけで治療した場合, 骨盤内の再発率は12-20%ですが, 手術前に(化学)放射線療法を行うと, 再発率は数%程度に減少します. 手術前の化学放射線療法によって 約20%の患者さんでは直腸の癌が消失し, 約30%の患者さんではステージ(病期)が改善します. これらの約50%の患者さんでは, 肝臓や肺の再発も少なくなり生存率が改善することがわかっています. 残りの約50%の患者さんの肝臓や肺の再発を防ぐ試みが世界中で行われています.
日本大腸肛門病学会 http://www.coloproctology.gr.jp/aboutsickness/archives/23
がん研有明病院のページには
肛門に近い進行直腸がんに対して、手術前に放射線治療と抗がん剤治療を組み合わせる治療法は、ヨーロッパやアメリカでは一般的であり、手術だけによる治療法にくらべて優れた治療成績が報告されてきました。しかし、日本では、この治療を行う施設は決して多くありません。
がん研有明病院 2020年10月5日最終更新
となっていました。ちなみにこちらのがん研では術前放射線化学療法を行っていると書いてあります。
私のいるアメリカでステージ3の直腸癌には標準治療となっていますが、
日本での直腸癌の治療について知識が全くないのですが、
この治療をすべての病院が取り入れているわけではない
と言うことなのでしょうか。
ただ、
厚生労働省から国の方針として, 患者さんの数が多い5つの癌(肺癌, 胃癌, 肝臓癌, 大腸癌, 乳癌)の治療に関して, 手術, 放射線治療, 抗癌剤治療を組み合わせて行うことができる医療施設を “がん診療連携拠点病院”として指定し, 患者さんに質の高い医療を提供することが示されています.
日本大腸肛門病学会 http://www.coloproctology.gr.jp/aboutsickness/archives/23
とも書いてあります。おそらくですが、
こちらはアーカイブされた記事で、2015年頃の記事だと思うので
現在はもっと術前化学放射線療法が拡大しているのではないかと思います。
さて私の話は長いので今日は結論から申し上げますと、
私の腫瘍はこの治療で嘘のようになくなりました。
完全にではありませんが、6cmの腫瘍が、
肉眼ではわからないくらいにまで回復して
手術後の生検の結果では、2mm程度腫瘍の跡が残っていただけでした。
(記事の最後に画像をリンクしました)
治療前には放射線治療に伴う副作用についても説明を受けましたが、
「この治療を受けた患者」としての個人的な感想は
副作用があっても、受ける価値のある治療だと思いました。
副作用の中には、生殖機能への影響もあり、患者さんのライフスタイルによって
QOLをどう考えるかという選択にもなってくると思います。
私も今後妊娠を考えているのであれば、卵子を凍結するように勧めらました。
実際にこの治療を検討されている方で、妊娠を考えている方は、
卵子または受精卵を凍結しておけば、治療が終わってから赤ちゃんを授かることも可能ということです。
参考までに、私も放射線治療以降、実際に生理が完全に止まりました。
年齢的に私はもう来なくてもいいので、特に治療はしていませんが、
がん治療が終わった時に、低量のピルを使う治療で、
生理がまた来るようになることがあるそうです。
私はこの時点ではとにかくがんが進行することや、
万一の死に対する恐怖と不安しかなかったので、
できることは副作用があろうがなんでもやる気持ちでした。
特に、がんの三大療法でがんを克服した知り合い、家族を見てきたので、
副作用の少ない代替療法には興味はなく、
まだ娘たちも成人していないので、とにかく確実な方法で治したいという気持ちだけでした。
では具体的にはどういう治療かというと、
放射線を患部に5週間平日に毎日(25回)照射するのと同時に
抗がん剤5FU(フルオロウラシル)を24時間継続投与を携帯用ポンプを使って
CVポートから5週間継続して投与をする治療です。
私の場合は放射線治療が祝日などで5週間よりも延びたため
5FUは6週間投与しましたが、
放射線治療中に低量の5FUを継続投与することによって
放射線治療の効果を圧倒的に高めることができるそうです。
私の場合は点滴での投与でしたが、錠剤でも良いということでした。
私の腫瘍科の先生の経験では、点滴の方が副作用が少ないようだ、
ということだったので私は点滴でお願いしました。
放射線の治療自体は痛みはなく、照射自体は2分程度だったと思います。
治療室に入ってから終わるまでは10分かからなかったと思います。
ただ、この治療の際には他の臓器に放射線が当たってしまうのを防ぐために
膀胱をいっぱいにした状態にしなければならないということで
予約時間の1時間前から500mlから600mlの水分を摂るように指示され、
治療が終わるまで、トイレにはいかず、膀胱をいっぱいにして
照射位置がずれないようにするのですが、
このトイレを我慢するというのが放射線治療では一番辛かったです。
副作用は、私の場合は治療中盤を過ぎた頃から下痢が始まりましたが、
確かに下痢も普段の生活をする上では困りましたが
膀胱をいっぱいにしてトイレを我慢することの方がキツかったです。
予約時間から逆算して水やスポーツドリンクを飲みはじめますが、
予約時間通りに呼ばれないこともありますので
そんな時は本当に辛いです。
一回、我慢しきれず照射直前にトイレに行ってしまい、
もう一度水分を補給からやり直して照射する、ということが一回ありました。
膀胱がいっぱいの状態で、位置を調整するためにカスタムメイドされた
パットが敷かれたMRI用のテーブルのようなところにうつ伏せに固定され
そのあと技師の方がCTの画像を見ながら装置の位置を調整して
患部にあたるように照射位置に固定し、照射が始まります。
機械の動く音がして照射が始まりますが、
なかなか照射位置が定まらない時もあり、
うつ伏せで待つ間トイレを我慢するのは本当にきつかった。。
治療中は毎回、照射が終わってそのままトイレに駆け込みました。
下腹部の照射の場合は膀胱をいっぱいにするのが決まりなようで、
トイレに駆け込むのは私だけではないようで、
照射室の中にそのためのトイレがありました。
それから、胸のCVポートから点滴の針を入れているので
ポートのところに小さなドーナツ枕のようなものを当てないと
うつ伏せになるのは痛いので
これも技師の方が毎回用意してくれました。
私の病院は大学病院で家から1時間弱のところにある病院なのですが
放射線治療や、抗がん剤治療ができるクリニックはメインの病院の他にもいくつかあって、
幸い家から車で5分というところに放射線の施設があったので
とてもラッキーでした。
治療中の体調としては、私の場合の副作用は
吐き気、倦怠感、下痢、爪に茶色い色が少し出てきたり、
肌が日焼けしたような色になったり乾燥が気になったりしました。
あとは生理が止まりました。
ただし、大体は薬で抑えられる程度の副作用で、運転もでき、
ほぼ普通に生活できました。
治療中はせめて仕事は休むようにと、妹が協力してくれました。
なぜかと言うと、少し無謀な生活をしておりまして、
毎日合計5時間(渋滞があると6時間)運転しての娘の送り迎え、
片道1時間半弱を2往復、もしくは、朝送って、
そのまま練習に付き添い、夜8時ごろ帰宅するというスケジュール
これに加えて日本時間で(アメリカの夜)仕事をしていたので、
(病気になったのはこんな生活を続けていたからという説も有力)
放射線治療中、娘たちの送り迎えだけになったら
かなり楽になりまして、
治療のための体力も蓄えることができたと思います。
私が病気になってすぐ、日本から妹が飛んできてくれて、
2ヶ月くらいいてくれたので、いろいろ助けてもらい、
仕事や生活の面、また精神的にも助けられ暗い気持ちにならずに、
治療以外にも病院へ診察に行く日には娘の送迎をお願いしたり、
一緒に買い物に行ったり、いろいろ助けてもらい本当にお世話になりました。
妹がいったん帰国してからも、
朝娘を送り、帰宅して放射線治療に行き、
帰宅して少し休んだり家のことをして、長女を迎えに行き、
長女を家に降ろして、再度次女を1時間半かけて迎えに行く、
という毎日でした。
週末は放射線治療がお休みで、
抗がん剤のポンプを持って、買い物に行ったり、
娘の希望大学を見にいく日帰り旅行にも行きました。
副作用がコントロールできる範囲でできるかぎり普通に生活することで、
気持ちのバランスを保てていた気がします。
治療開始後2週間くらいからは下痢がひどくなり、
3週間目以降は出かけるときにトイレに間に合わないことがあったりしたので、
おむつを使うようになりました。
そのうち、家にいても、トイレまで間に合わないことがあり、
間に合わないことがある度に落ち込んだりしていましたが、
大人用のパンツ型のおむつを見つけて使うようになったら
少しは気分が楽になり、これがないとだめな生活でした。
健康なときには考えられませんが、下痢と言っても
副作用からくるもので、まったくコントロールが効かず、
下痢止めを2種類処方してもらっていたのですが、
それでも全く効きませんでした。
最後は、ステロイドの点滴と、あまりの下痢で脱水になりかけていたので、
週に3回通院で水分補給に点滴をすることになりました。
というわけでこの時期の下痢には苦しみましたが、
ひどい副作用としてはこれくらいで、
吐き気は、処方された薬を飲めば抑えられる程度で、
その薬も1日に一回飲んだ程度です。
そして、治療開始後3週間すると便意を催してトイレに行くと、
便ではなく白っぽい少しピンクの混ざったものが
出てきたりしました。
最初はなんだかわからなかったので焦りましたが、
どう考えても食べ物ではなかったので、先生に聞いたところ、
おそらく放射線の効果で剥がれ落ちた腫瘍の組織でしょう、ということでした。
驚きでしたがそれが分かってからは、治療が効いているんだ、
と実感することができてがんである、と言う不安な気持ちも和らぎました。
この治療の間で一番辛かったのは、膀胱をいっぱいにすることと下痢でした。
この5週間の治療が終わって1ヶ月後に、手術担当の外科の先生の診察があり、
シグモイドスコピーで腫瘍の部分を確認したところ、
腫瘍があったところが全く普通の腸壁のようにきれいになっていて、
素人目には何もないようにしか見えませんでした。
治療は大成功で、これでストーマは永久でなくて大丈夫そうだと言うことでした。
この時は本当に本当に嬉しかったです。
実際にどのくらいの腫瘍が消えて無くなったのがわかるように
初回内視鏡の際の私の腫瘍の画像を載せておきます。
気分が悪くなられる方もいらっしゃると思いますので、
閲覧される場合はご注意ください。
腫瘍の位置肛門縁から 6.5cm
腫瘍のサイズ 6cm
Distance of lower border of tumor from the anal verge: 6.5 cm
Craniocaudal measurement of tumor: 6 cm